良性発作性頭位めまい症
ある朝のこと。くまこは目が覚めて起き上がろうとしてふと左を向いた瞬間、目の前がぐるぐる回り始めた。
何が起こったのか分からないが、不安に駆られ、もう一度頭の位置を戻し、目をつぶって落ち着くまでじっと耐えていた。
これがめまいってやつなのかな?不安になりながらも時が経つのを待っていると、自然とめまいは落ち着いた。
ぐるぐるしていた時間は、だいたい40秒くらいだろうか?よく分からないが落ち着いたからもう大丈夫かと考え、念のためもう一度首を左に向けてみた。するとまた同じようにぐるぐるするではないか。
その後、首を左に向けなければ問題ない事に気がついたが、相変わらず左を向くとぐるぐるする。これはおかしいと思ったくまこは、しまりす耳鼻咽喉科へ向かうのだった。

先生、こんにちは

こんにちは、くまこさん。首を横に向けるとめまいがあるのですね。

そうなんです。こんなこと初めてで。めまいがあると吐き気もします。

ご飯は何とか食べられますか?
吐き気が強くて食べられないようなら、脱水が心配ですから場合によっては大きな病院へ紹介しますが…

食事は大丈夫です

頭痛や手足の痺れ、麻痺などはありますか?
ろれつが回らないなど、ないですか?聞こえ方は問題ないですか?

それは大丈夫です。聞こえも問題ないです。

分かりました。早速めまいに関わる検査、診察をしましょうね

お疲れ様でした。色々と検査しましたから、一つずつ説明しますね。

はい

まずは、鼓膜は問題ありませんでした。
手足の動きなども協調性に問題は認めず、小脳失調などの可能性は低いと考えます。
目の揺れの検査では、頭の位置を変えたり、暗いところで目の揺れが出ないか確認したりしましたが、特に異常を認めませんでした。

聞こえの検査を施行したのは、平衡感覚を司っている部位と、聞こえを感じる部位が同じ『内耳』という組織にあるからなんです。
例えばメニエール病という病気では、めまいと聞こえにくさが同時期に現れる事があるのですが、それはメニエール病が内耳の病気だからなんです。

ほー

ただ、くまこさんの場合、聞こえの検査は問題無かったです。
検査結果を総合して考えると、良性発作性頭位めまい症ではないかと考えます。
なかなか長くて難しい名前の病気ですが、耳鼻咽喉科の外来にいらっしゃるめまいの患者さんの中では、割りとよくある病気なんですよ。

ちょっと難しい話になりますが、内耳というところに、平衡感覚を司る平衡斑という部位があります。
ここに耳石という小さな結晶がついていて、バランスを保つのに一役買っているのですが、これが何かしらの理由で剥がれて、内耳の中の他の部位に付着すると、めまいを起こすと言われています。
くまこさんの場合、この病気でめまいが起きているようですね。

なるほど。何か治す薬はあるんですか?

残念ながら、薬で治る病気ではありません、対症療法薬はありますから、めまい止めや吐き気どめなどは出せますよ。
基本的に時間経過とともに改善することが多いです。
立っている時にめまいがあって、転倒すると危険ですが、横になっているときは転倒しませんから、ベッドや畳などの上で横になり、頭を動かすことが早く治るコツかと考えます。

じゃあ、薬を少し頂いて良いですか?

分かりました。1週間分ほどお出ししておきますので、様子をみてください。
もし症状が続くようなら、1週間後頃にまた見せてくださいね。
もし頭痛や手足の痺れがめまいと一緒に起きるようなら、救急車を呼んでください。

わかりました、ありがとうございました。
耳鼻咽喉科では多い病気
良性発作性頭位めまい症は、耳鼻科外来にいらっしゃるめまいの病気の中でTOP3に入る、罹患率の高い病気です。
しまりす先生が説明しているように、平衡斑のシステム異常で起きる病気とされていますが、耳石はあまりにも小さいため、これをCTやMRIで確認しようとしても描出できず、確認することはできません。
病気の発症パターンは驚くほど皆同じであり、患者様からお話を伺っているだけで、ほぼ良性発作性頭位めまい症だと確信できるほどです。
実際は色々検査や診察をして、他の病気の可能性を除外する必要がありますが。













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