メニエール病
今年から新社会人となったねず子は、とても生真面目だが少し神経質でもある。早速早くに仕事を覚え、毎日仕事に明け暮れる日々を送っていた。
ある日、デスクで仕事をしていると、突然ぐるぐる回転するようなめまいに襲われた。
とても耐えられないため、座り込んで治らないか様子をみていたが、一向に改善する気配がない。そういえば急に右耳が聞こえにくくなってきた気がする。
そうこうしているうちに、次第にめまいは落ち着いてきた。不安に思ったが、仕事に穴をあけるわけにはいかないと思うねず子は、そのまま次の日も仕事に繰り出すのだった。
次の日。営業の仕事についていたねず子は、外を歩いている最中に、また同じようなめまいを感じた。
「またか…どうなっているんだろう?」不安に思ったねず子は、まずは近くにあった内科を受診した。そこの内科にはCTがあり、頭部CTを撮影してくれたが、特に問題ないという。
そして驚いた事に、耳鼻科を受診するよう勧められたのだ。「何で耳鼻科なんだろう?」ねず子は不思議に思いながらも、しまりず耳鼻科を受診するのだった。
こんにちは。
こんにちは、ねず子さん
ちなみに、今はねず子の症状は落ち着いている。
なるほど。ねず子さんの症状、経緯は分かりました。
何で耳鼻科を勧められたのかと不思議に思うかもしれませんが、耳の奥の方には内耳という組織があり、ここは音を感じる大事な組織なのですが、平衡感覚なども感じている組織なのです。
めまいと耳鼻科はかなり密接な関係にあるんですよ。
そうだったんですね、知りませんでした。
まずは、耳に関わることをしっかり調べましょう。
聞こえの検査なども大事です。
あと、念の為神経所見も確認しましょうね。
しまりすは両方の鼓膜を観察した後、眼振検査という目の揺れを確認する検査を行った。
そして神経所見を確認した後、聴力検査を行い、再びねず子の診察を行うのだった。
ねず子さん、こういったことは初めてですか?
いえ、実は以前にも同じようなことがあったんです。
ただ、その時はそこまで酷くならなかったので、特に病院を受診したりはしませんでした。
そうだったんですね。
めまいの診断は、一回の診察のみで済む事は少なく、二度、三度の経過観察を経てはっきりしてくることが多いですが、ねず子さんの場合、メニエール病の可能性が高いです。
ねず子さんは、再度当院でも神経所見を確認しましたが特に異常なく、すでに内科で頭部CTを撮影して異常なしと診断されており、脳の病気でめまいが起きている可能性は低いと思います。
鼓膜も特に異常なく、眼振ははっきりしませんでした。
ただ、聴力検査で低音の聞こえが落ち込んでおり、めまいお持続時間がかなり長かったことを考えても、メニエール病の可能性が高いのではないかと思います。
メニエール病ってどんな病気なんですか?
少しだけ聞いたことはありますが。
メニエール病は、耳の奥にある内耳というところが、大まかにいうとむくむ病気です。
内耳の何処がむくんだかで、聞こえが悪くなるだけの方、めまいだけの方、両方症状が起きる方に分かれるようですが、詳しいことはまだわかっていません。
ただ、この病気は何度か症状を繰り返すことが特徴で、完治することはなかなか無いのが現状です。
今はかなり状態が悪いタイミングですから、まずは薬を使って経過を追っていきましょう。改善するペースは人それぞれなので、長い方は数週間改善まで要する事もあります。
わかりました。
メニエール病の患者さんは意外に多い
メニエール病は、めまいを感じる患者さんの中では、統計上まれな病気ではありますが、これまで耳鼻科医を続けてきた体感上は、思ったより患者さんの数が多いと感じています。
特に几帳面で真面目な方がメニエール病になりやすいと言われていますが、確かにそのような印象を受けるのも事実です。
しまりす先生が言っているように、メニエール病は繰り返す病気で、正確な原因は分かっておらず、薬で完治することは難しい病気です。
急なめまい、耳が詰まった感じに注意
めまいや耳閉感、耳鳴などが急に生じた場合、メニエール病の可能性があります。
早めの耳鼻科受診を勧めます。
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