慢性的な喉の違和感
慢性上咽頭炎・病巣性扁桃炎
EAT治療の項目でもお伝えしておりますが、当院では慢性上咽頭炎に対しEAT治療を行っております。
EAT治療を希望され、長引く喉の違和感や後鼻漏など、色々な違和感を訴えられて多くの患者様が当院を受診されておりますが、程度の差こそあれ、治療を継続していく中で症状の改善を認めることが多いように思います。
EAT治療の歴史
もともとこの疾患は、大阪医科大学耳鼻科初代教授の山崎教授が報告し、戦前より鼻咽腔炎として研究されていたものです。
その後、東京医科歯科大学初代教授である堀口教授が、1950年代後半に精力的に研究され、多数論文等発表された、という長い歴史があります。
現在は鼻咽腔炎ではなく、慢性上咽頭炎と呼ばれています。
現在2020年ですから、堀口教授が論文を出されてから60年程度経過しております。
慢性上咽頭炎との戦いはまだまだ続く
しかし慢性上咽頭炎に関しては未だ知見の進展は進まず、あくまで実地医科の先生方が細々と治療を継続している状況です。
なぜそのようになったのか、その経緯について簡潔に申しますと、堀口教授が鼻咽腔炎について各種報告をしていた当時、EATはさまざまな症状に効果があると報告されたため、当時の耳鼻科医達より懐疑的な目が向けられたものと考えられています。
ただ、これには現時点ではちゃんとした裏付けがあるのですが、当時は判然としない部分が多かったのです。
実際にEAT治療を継続してみて実感するのは、多くの方で処置の継続により症状の改善を認めるということです。
上咽頭については定期的に観察しておりますが、腫瘍性病変と異なり、慢性状咽頭炎に関しての上咽頭における決定的な所見はまだ確立されておりません(上咽頭の鬱血所見や敷石状所見など、いくつかのパターンは指摘されております、もちろん素人目にみても明らかに上咽頭だけに喀痰が固着している患者さんもいらっしゃいます)。
人を含めたほ乳類は本来鼻呼吸をしますが、鼻から吸い込んだ空気が最初にリンパ組織と接触するのは間違いなく上咽頭の咽頭扁桃です。
外部からのウイルスにまず立ち向かうのが上咽頭
咽頭扁桃は線毛上皮といわれる層でおおわれており、免疫細胞であるリンパ球が表面に出ており、常に外敵であるウィルスや細菌を監視し、場合によっては戦っております。
免疫のシステムについては未だ不明な点も多く、断言できない部分も多いですが、吸気経路における最初の関門である上咽頭で、ウィルスや細菌に対し反応が最初に出るのは当然の結果ではないかと考えます。
実際、インフルエンザウイルスの検査、新型コロナウィルスの検査も、綿棒を鼻腔より上咽頭へ挿入し、上咽頭での検査を行いますよね(新型コロナウィルスについては、現在は唾液での検査も行われております)。
この上咽頭にあります咽頭扁桃での反応性が強い方、ないしは強く感冒症状が出た後、炎症が軽度残ってしまう方の場合、慢性的な喉の違和感や後鼻漏感、あるいはめまいや頭痛、微熱感、嗅覚低下などをきたすのではないかと思われます。
堀口教授の先見の明
驚くべきことに、これらの症状についての記載は、1958年頃の堀口教授の論文に多分に記載されているのです。
すでに60年程度前の論文ではありますが、堀口教授の他の論文を読みましても、現在まで通ずる多くの知見を得ることができます。
そもそも人は10年や20年で進化するわけではないので当たり前といえば当たり前ですが、EAT治療をもっと早くから始めるべきであったと今となっては強く思うようになりました。
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